栽培手順

Cultivation procedure

育 苗

(1)播種と発芽前の管理

育苗トレイ(144穴)にロックウール粒状綿を主成分とする専用培地を充填し、プレス板で播種穴をつける。播種板により、1セル当り4~5粒播種する。覆土後、1トレイ当り300ml~400mlかん水し、発芽室(20℃設定)で発芽させる(3~4日)。

(2)育苗管理

発芽したら出庫し、育苗棚に広げる。高温期は1日2回 、中低温期は1日1回、1トレイ当り300ml~400mlの培養液を自動灌水する。育苗培養液の濃度は高温期はEC1.3dS/m、中低温期はEC1.5dS/mとする。

STEP
1

定 植

定植予定の栽培ブロック(栽培ベッド4~6本500lの培養液タンク、給排水系で1つのブロックを構成。16a当りベッド群を10~16ブロックに分ける)に、新しい培養液をセットする。本葉は2枚が3cm前後に伸びた頃が定植適期である。定植にさきだち、苗抜板を用いて苗を押し上げておく。定植は苗をつまみ、定植パネルの植え穴に落とし込むだけでよい。根鉢がベッド底面に支えられ、苗は自立する。栽植本数は1パネル(1×0.6m)当り45穴。苗根鉢は湿気空間の中に置かれ、直ちに発根を始める。

STEP
2

栽培管理

(1)培養液の組成

ホウレンソウは、NO3-NとKを多く吸収し、Ca吸収は少ない。見かけの吸収濃度を求めると、概ねNO3-N:16me、P:4me、K:12me、Ca:4me、Mg:4me/lとなる。これを目安に液肥(ハイテンポ)で調整する(原水成分を加味する)。

(2)培養液の濃度

スタートおよび補給用の培養液ECは3dS/mとする。育成に伴いECは低下し、収穫前2~3日には1.2dS/m前後となる。この時、培養液補給を停止し水のみ供給すると、収穫時には肥料成分はほとんど吸い尽くされる。肥料のむだが無く、栽培残液を廃棄しても環境を汚染しない。

(3)培養液のpH

pHは6~6.5が理想的である。育成に伴い、pHは緩やかに上昇する。5.5~7.3の範囲なら調整の必要はない。

(4)培養液の温度

春・夏季は23℃以下に保つ。タンク内の熱交換器へ、井戸水またはチラー冷水を流して冷却する。(冬季は10℃以上に保つ)

(5)水分の供給

1ベッド当りの給液量は9リットル/分とし、連続給液する。各ブロックの培養液タンクには、メインタンクから基準培養液が自動補給される。

(6)酸素の供給

ベッド内空中酸素を根が利用できる構造となっているので、あえて考慮する必要はない。

(7)地上部の環境管理

春・夏季は積極的に換気する(きわめて重要な作業)。夜間も常時換気する。遮光ネット(20~30%遮光)を5~10月の晴天時に展張する。7~8月は固定張りでよいが、曇雨天が続く場合はこの期間でも開ける。

(8)作物管理

収穫はとくにない。

地下部 ECの目標値 定植時 3.0 → 収穫前2日 1.2 → 収穫時 0.8
pHの目標値 5.5~6.5が理想
栽培液の温度 井戸水またはチラー冷水で冷却、23℃以下に保つ
その他の管理 給液は連続
地上部 ハウスの気温 昼夜ともに換気につとめる
炭酸ガス濃度 なりゆき
光環境 20~30%カットの遮光ネットを運用。7、8月は固定張り
病害虫防除薬剤 完全無農薬栽培とする。栽培装置、資材を熱殺菌する
STEP
3

病気と害虫の防除

ピシウム菌による立枯病、フザリウム菌による萎ちょう病に周年注意する。栽培終了後、ベッド消毒を行う。方法は、ベッド清掃後新しい培養液をセットし、ベッドをフィルムで覆う。温湯ボイラーで培養液を60℃に暖め、1時間ベッド内を循環させる。これで、ベッド、タンク、パイプなどが殺菌される。簡便で効果的である。アブラムシ、ヨトウムシも時には発生するが、大きな被害には至らない。農薬は一切使用しない。

STEP
4

収 穫

本葉が25~30cmになったら、培地をつけたままで収穫する。早朝収穫が望ましい。荷姿は出荷先と相談し決める。枯葉がないため、下葉かきは子葉のみの除去で充分である。調整時以外は予冷庫に収納しておく。

STEP
5